黒沢清監督 蛇の道
価格:2,200円 |
やっとである。
今まで見れてなかった『蛇の道』。
ついに見た。
感想を一言でいうと、超絶演出で面白い。
ストーリーは、哀川と香川の復讐劇。
しかし、ただの復讐劇ではなく、演出により異様な空気間を醸し出している。
裁きの舞台となる廃工場は、まるで地獄である。
裁かれる者に対して制裁を与えていく。
その距離感は天と地のごとく遠く、縮まることはない。
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演出のポイント
以下、演出のポイントを挙げていく。
哀川を死神のように見せている。
淡々と悪をこなし、他人の命を操っているようだ。
講義室での講義では、まるで生徒は生きていない。
死人のように黙り、ただ講義を受けている。
講義内容は空間と時間の方程式を扱っている。
哀川は空間と時間について特殊扱い方を知っているはずである。
少女がヒントを与えて何か特別な方程式を解いたようだ。
講義が終わり生徒が帰るとき、哀川は生徒が帰る方向を振り向くと誰もいない。
まるで存在してないかのように消えている。
生徒の一人の少女が香川と対面するシーンがある。
香川と顔を合わせると、徐々に香川の表情が変わっていく
まるで過去に会ったことがあるような顔である。
少女の表情はまるで霊のようだ。
ラストシーン
ラストシーン、香川との出会いであるが、よく見ると最初に見せた出会いの回顧シーンと違うことに気づく。
最初のシーンでは香川が声をかけているが、ラストでは哀川が声をかけている。
つまり、2回目の出会いとなる。
そのシーンも静寂で、色あせた景色、人は誰もおらず、まるであの世のように静寂である。
哀川の表情のアップはまるで香川を知っており、状況も知っているようだ。
つまり、香川は地獄の経験を繰り返しているのである。
それはカルマによる経験の永遠の繰り返し。
善因善果、悪因悪果の繰り返しである。
そう感じると、この映画の登場人物は全員死人なのではと気づく。
下界の人との交流は全くない。哀川、香川の妻さえも登場しない。
生徒の死者と香川の関係者のみで演出されている。
カルマによる経験の永遠の繰り返し、これが作品のテーマなのではと感じた。
とても重い映画であった。洗練された演出、大傑作である。
価格:2,200円 |
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